パイロットフィルム『青山編』

※唯一１枚だけ所持しているパイロット『青山編』のセル画です。
カーソルを持っていくと本編の画が出現します。

富山敬氏に頂いたサインです。
パイロット・ジョーと書いて貰えば良かったかな・・・！？

パイロット青山編

フジテレビ放送を前提とし、同局プロデューサー・別所孝治氏のバックアップを受けて虫プロスタッフにより作成。

１９６９年１０月２５日
パイロットフィルム「青山編」原画イン
１１月６日
パイロットフィルム「青山編」動画アップ

絵コンテ/出崎統 作画監督/北野英明 原画/川尻善昭　上梨壹也　他

キャスト
矢吹丈/富山敬
レフリー/立壁和也
ナレーション/名古屋章
他不明
※何とジョー役に富山敬氏が参加！
同じ梶原原作では伊達直人、番場蛮等の主人公をあててます。

虫プロ社内報「企画室ニュース」
昭和４４年１１月８日号では、総尺８分、
完成予定１１月１４日と明記。

●北野 英明 (きたの えいめい)
昭和１６年９月２２日 横浜市生まれ
高校時代から漫画を描き、後に虫プロへ入社。
アニメーター、演出家として１０年間活動する。
昭和４６年７月、出版界へ身を投じて、劇画家として独立。

演出
1966.07.31　ジャングル大帝 　虫プロ
1968/2/1～1968/9/26（全35話）わんぱく探偵団
1970.03.15　おかしな一日　（Once upon a time）手塚プロ

原画
1969.06.14　千夜一夜物語 　虫プロ＝日本ヘラルド
作画監督&演出
1969.04.06～09.28『どろろ』『どろろと　百鬼丸』
(14～タイトル変更)
※出崎統氏も演出参加

コミックス
雀ごろブルース
作：阿佐田哲也/画：北野英明
TOPコミックス／秋田書店 S50.11.30（初）

ギャンブル地獄
作：吉岡道夫・野村敏雄・志村裕次/画：北野英明
TOPコミックス／秋田書店 S51.2.28（初）

牌の魔術師
作：阿佐田哲也/画：北野英明
TOPコミックス／秋田書店S53.1.10（8）[初 S49.9.10]

『青山編』解説

雨が降り、風が吹き、そして嵐が荒れ狂う辛く苦しい人生。
そんな人生にも似た激しく壮絶な世界”四角いジャングル”と人は言う。
数多くの青春が血反吐を吐き、涙しながらも栄光を求めて立ち上がっていく世界。

ウルフ金串戦のシーンからスタート。
画面は金竜飛（ＴＶ２）の子供時代のシーンを思わせる色調。
ダウンするジョー。
カウントを取るレフリー。
（声/立壁和也）
８カウントで立ち上がるジョー。
リングロープをつかむグラブ。
（丁寧なブラシ処理の動画）

・・・そしてこの少年の青春もまた、
栄光の明日を求めて四角いジャングルの中を彷徨う・・・寂しさに吠え、
勇気に燃え、友情に泣き、そしてＦＩＧＨＴ！闘う！
・・・少年の名は”矢吹丈”ひとよんで”あしたのジョー”

ウルフとの死闘中にタイトルＩＮ
（BGM:段平のテーマ）

あしたのジョー。
またの名を喧嘩屋ジョー！
親もなく家も無い、天涯孤独の風来坊！
踏まれれば踏まれるほど強くなる雑草のような不屈のエネルギー。
傷だらけ血まみれの今日を乗り越え、
明日に向かってガムシャラに体当たりする男、ジョー。
あしたの為の武器をとぎすます！
風を切り、風邪を裂き、人の心を打つ魂のパンチ！

シーンは鑑別所に入れられて段平の葉書を参考にジャブを打つジョー。

段平登場
（雨の中傘をさしてジョーを想う・・・）

この男、名は丹下段平。
昔果たせなかったチャンピオンの座へと
夢を果たせる若きボクサーを躍起になって探している拳闘キチガイである。
そんな執念の男、段平が、ジョーの未完成ながらも迫力のあるパンチに魅せられた！

段平アップになり最後は眼帯のどアップ！
眼帯の中に映るジョーの姿！（なぜ眼帯？）
雪の中、鬼姫会との喧嘩シーンへ！
段平もその場にいるカットになり、
『こいつだ！俺が探し求めていた奴だっ！』
カット変わり、段平が少年院スタイルのジョーを雨の中で殴るシーンへ！
（イメージ的には廃墟のシーンだと思われます）

かくして、段平とジョーの男と男の激しいぶつかり合いが始まった！
血を血で洗う男の闘いの日々が・・・。

シーン変わり、少年院で青山に付く段平に頭を下げるカットへ。
『おっちゃん！頼むよ！生まれてこの方人に頭を下げた事の無い俺が
こうやって見栄も意地も捨てて頼んでんじゃねぇか！
何で俺をのけ者にして青山にだけコーチをするんだよ！』
青山、にやけながら段平の顔を伺う・・・。
『どうしようもなく惚れちまったんだ！拳闘って奴によぉ！』
頭を下げてお願いするジョー。
『・・・せっかくだがな・・・断る！』
冷たく言い放つ段平。
『えっ！？』
驚き、頭を上げるジョー。
『ワシは今、青山君のコーチだけで手一杯なんだ。
とってっもお前までは手が回らねぇよ！』
無言のジョー・・・。
『行こうか、青山くん。向こうでトレーニングしようじゃないか！』
ジョーの事を気にしつつ去る青山。
ジョーは正座したまま・・・。
『くそおっ！』
雷が鳴り、大雨が降る中飛び出し駆け出すジョー。
『頼むもんか！意地でも拳キチなんかのコーチは受けねぇぞ！
自力で・・自力で堂々と試合をやってやる！』

青山との試合シーンへ
グラブを合わせたカット、
合間から透過光を使用した太陽が除く。
レフリーは段平。
ジョーのセコンドは西寛一。
『おい、拳キチよぉ！お前の可愛い青山をこの俺様が粉々にしちまうぜ！
いいんだろうな！へへっ！』
どアップ、流し目で笑うジョー。
ゴング！
『青山！行くぜっ！』

拳キチとジョーの男の意地が火花を散らす対決の日がやってきた。
拳キチのコーチによって高等技術を身につけた青山は
ただガムシャラに暴れまくっているだけのジョーを
サンドバッグを叩くように滅多打ちにした！

『な、なんてこったい！
こんな青びょうたんにやられっぱなしなんて・・・みんなかわされちまう！
俺のパンチが一つも当たらねぇ・・・』
ダウンするジョー。
収容生達のヤジ。
心配する西、ガキ連達。
『ジョー立て、立つんだ！俺との決着はまだついていない！
この力石との勝負が残っている！』
見守る力石。
『矢吹くん！立って！立つのよ！あなたのあしたのために！』
心配する葉子。
・・・カウントを数える段平。
立ち上がるジョー。
『おっ！こ、この目はっ！思い上がった喧嘩ごしの目じゃねぇ！
ボクシングの恐ろしさを認めた素直な目だ！』
ジョーのグラブをふき、ファイトを命じる段平。
ジョーのボクシングスタイルに驚愕する青山。
収容生達や西も驚く・・・。
『拳キチよ、青山よ！ハッキリ断っておくがな、
俺はお前らコンビに恐れをなした訳じゃないぜ！
拳闘そのものの底知れず恐ろしさに対して頭を下げたんだ！
これからは自己流なりに防御もやる！
この恐ろしくどでかいボクシングに負けない為に！俺の人生に勝つ為に！』

動かなくなった２人にじれる収容生達。
『さあ、青山くん！ファイトだ！』
ファイトを命じる段平。
『は、はい・・・いや、しかし・・・』
答える青山だが・・・。
『行きたまえ！』
と再度段平！
フットワークを使い青山の攻撃を交わすジョー。
『ジョーのやつが、フットワークを！』
と西。
『真似しやがった・・・ワシが青山君に仕込んだとおりに
見よう見まねで実戦に使えるなんてやっぱりジョーの素質はただ者じゃねぇぞっ！』
驚愕する段平！
『くそぉ～～～っ！』
青山必死に食らいつくがジョーにことごとく交わされる・・・。
ジョーの右ストレートでぶっ飛ぶ青山！
ダウン・・・そしてジョーの左腕が高々と上げられる。

ジョーは勝った。
数限りないダウンから、数限りなく立ち上がった！
ジョーの根性と不屈のエネルギーがジョーに勝利をもたらした！
試合の後、段平はジョーに全てうち明けた。

『ジョー、すまん許してくれ！いくらジョーの為とはいえ、
こうまで人の心をもてあそんでいいものかと・・・』
とうち明ける段平。
『俺の為だって？』
とジョー。
『そうだ。ワシが心を鬼にしてお前を冷たく突き放したのは
お前に拳闘の神髄を知って貰いたかったからだ。』
青山＆ジョーを前にして土下座して誤り告白する段平。

段平は防御の上手い青山を使って、
ジョーに防御の重要さを己の肉体から吹き出す
血吹雪と苦痛によってジョーに悟らせようとしたのだ。

ジョー、青山から離れ、少し間を置いて背を向けて座る。
段平、ジョーに語りかける。（無音）

そして、段平は自分のジョーにかける執念が青山を利用したことを詫びた。

土下座する段平に近寄る青山。
ジョーはまだ背を向けたまま。

しかし青山は言った。
男の闘いの凄まじさを教えてくれた事を感謝する・・・と。

段平、顔を上げ涙。（涙が落ちる）

段平は泣いた。
若者二人の雄々しき命に。

走り出すジョー。

そして、この時ジョーは果てしなく厳しい、
果てしなく孤独なボクシングをたまらなく好きだと思った。
自分の青春をボクシングにかけてもよい・・・と思った。
そんなジョーを下町のチビども。
親友、西。富豪の令嬢、葉子、そして宿命のライバル、力石徹。
ジョーの青春は美しくもたくましく、炎の様に燃え上がる。
泣くなジョー！羽ばたけジョー！
血まみれ泥まみれの向こうにお前の為の輝く明日がある！

走り出したジョーにナレーションに合わせてキャラクターがフィラッシュバック！

このパイロットで作画されたカットはＴＶ１の１作目オープニングで使用されている。
全体の８割以上はここの青山編のパイロットからチョイスされている。

※赤文字はナレーションです。