あしたのジョーファンサイトSOUL OF JOE

TV版1のパイロットフィルム 力石編

パイロットフィルム『力石編』

※この画がTVシリーズの方向性を決めた! 出崎監督お気に入りの鑑別所内で考え込んでいるジョーです。

パイロットフィルム『力石編』

1969年12月
杉野昭夫、金山明博両氏がジャガードへ出向。
荒木伸吾氏とともにパイロットフィルム「力石編」の制作を開始。
12月22日
パイロットフィルム「力石編」動画アップ

制作期間1ヶ月
制作/ジャガード(中村橋)
シナリオ/丸山正雄
演出/出崎統
絵コンテ/斉藤 博
原画/杉野昭夫、金山明博、荒木伸吾
動画/菊田武(菊田武勝)他
※設定協力/佐々門信芳

キャスト
矢吹丈/あおい輝彦
丹下段平/藤岡重慶
サチ/白石冬美
平田/渡部猛
鬼姫会/立壁和也
ナレーション/名古屋章
他不明

※TVシリーズのスタート直前に番組宣伝スポットとして利用され、
深夜枠で盛んに放送されていました。

きっちりした設定画が無いまま、杉野、金山、荒木の3人で、作画開始。
シリーズの監督がすでに決まっていた、出崎氏は荒木作画(上記CG)の
止めカットのジョーがお気に入りだった様です。
座り込んで考え込んでいるカット・・・あれが一番ジョーらしいね。とのコメント。
ここからシリーズ様の作画を杉野氏が起こすことに・・・。

力石編での杉野、金山、荒木氏の主な担当カット

★ヤクザとの乱闘シーン、ラスト
杉野作画

★豚のシーン
※モブシーンと言えば金山、と言われていた程。
力石が一番描きやすかった。
サチやドヤ街の人が苦手。
金山作画

★段平のシーン
荒木作画

●杉野昭夫(すぎのあきお)
1944年9月19日北海道札幌市生まれ
1961年、貸本創画誌「街」「影」に投稿を開始。
セミプロマンガ家としての活動を経て、
1964年、投稿仲間である真崎守氏の薦めで虫プロに入社。
同社で「佐武と市捕物控」「あしたのジョー」などの作画監督を務める。
1972年に独立し(有)マッドハウスの設立に関与。
1980年、「あしたのジョー2」の制作開始にあたり、
出崎統氏とともに(有)あんなぷるを設立。
現在は手塚プロの諸作品で活躍中。
代表作は「あしたのジョー」「エースをねらえ!」「家なき子」
「宝島」「あしたのジョー2」「コブラ」「ブラックジャック」(すべて作画監督)

●金山明博(かなやまあきひろ)
1939年2月25日東京都生まれ。
1965年4月、虫プロ入社。
同社で「わんぱく探偵団」「あしたのジョー」などの作画監督を担当。
その後フリーとなり、サンライズスタジオ(後のサンライズ)で、
「超電子ロボ コン・バトラーV」「超電磁マシーン ボルテスV」
「闘将ダイモス」「未来ロボ ダルタニアス」といった一連のロボットアニメに参加。
アニメーションキャラデザインや作画監督として活躍し、
後の同社ロボット物の礎を築いた。
代表作は他に「無敵ロボトライダーG7」(作画監督チーフ)
「戦闘メカザブングル」(作画監督)「仮面の忍者 赤影」(キャラデザイン)
「鎧伝サムライトルーパー」(作画監督)など。

●荒木伸吾(あらきしんご)
1939年1月1日名古屋生まれ
1955年、貸本劇画誌「街」でセミプロマンガ家としてデビュー。
その後、真崎守氏から誘われ、1965年に虫プロに入社。
「ジャングル大帝」「ジャングル大帝 進めレオ!」等の原画担当後、
仲間数人と作画スタジオジャガードを設立。
「巨人の星」の原画、「あしたのジョー」の作画監督を担当する。
1970年からは、東映動画作品にもフリーの立場で参加。
1975年春、(有)荒木プロを設立する。
代表作は「キューティーハニー」「ベルサイユのばら」「聖闘士星矢」
「遊☆戯☆王」(以上全てキャラデザイン、作画監督)

『力石編』解説

東京タワーアオリ。
PAN DOWNしてタイトルへ。

東洋一の大都会、東京。
この華やかなマンモス都市の片隅に木枯らしが吹き抜け、
うらぶれた街に一人の少年が流れ着いた。

杉野作画

ドブ下視点、ロングショットで奥からやってくるジョー。
バストショットになり、キョロキョロとドヤ街を見回しながら歩くジョー。
缶をで蹴る(左足)ジョー。
缶はネコ(黒猫)に当たり、ネコはジョーに向かって威嚇。
ジョーもすかさずネコを威嚇!
ネコは慌てて屋根上に飛び乗る。
『へへっ』

段平登場。
ガキ連が鬼姫会にやられている片隅で酒を飲んでいる。

鬼姫会がサチを取り囲み強請。
平手打ちで殴られるサチ。
髪の毛まで細かく動き、アクションもイイ感じ。

『やいやい!どこへ隠しやがったんだ!このガキャ!』
『知らないよ!そんなお金!』
電柱の影から見ているのは太郎、トン吉、キノコ、ヒョロマツ、不明のキャラ1名。

電柱にしがみつくサチを連れ出そうとする鬼姫会。
(声:立壁和也氏)
そこへジョーの右ストレートが炸裂!
段平(同ポジ)、はっとなり、状況を見る!

鬼姫会ぶっ飛び、突っ込む木の塀が壊れる。
4枚の木の板ははじめからセル画で描写。
最後の1枚の半分が残る。

『なんで、なんでぃ!たかがガキ一匹に目の色変えんないっ!』
ジョーの再登場!
(電柱に手を添えてアオリ構図)

鬼姫会PAN。
平田まで行き、杖で肩を軽く叩きながら会話。
『なんでぇ!この野郎!俺たちを黒姫会と知ってちょっかい出したのかい?』
凄みを聞かせ平田。
(平田:渡部猛氏)
『ケッ、黒姫会!?なもん、てんで知るもんかい!』
と、強気なジョー(同ポジ)

突然襲いかかる黒姫会。
最初はナイフ攻撃!(左利き)
ナップザックで受け止め、すかさずパンチ!
続いて2人、3人・・・と大乱闘に!

『うう~ん、すげえ!こいつはすげえや!』
と食い入って見入る段平!

この男の名は丹下段平。
かつてはリングの黒熊と異名を取ったボクサー崩れ。
昔、自分の果たせなかった夢を、
今、この少年のパンチの中に見いだした!

最後、平田が杖でジョーに攻撃するが、
ジョー杖をかわし(右手で受け止め)、
強烈なボディーブロー!
杖を落とし、倒れる直前に静止した、
平田の帽子を軽く持ち上げるジョー。
(うつぶせに倒れると思いきや、
もんどり打って仰向けに倒れる平田)

『どうだい!俺の強い事!』
去ろうとするジョー。

『わぁ、格好いい!ねぇ、兄ちゃん、名前なんてーの?』
とサチが呼び止める。
『へへっ、俺か?俺はなぁ、矢吹ジョー、ジョーってんだ!』
と振り返り、一言いい去るジョー。

少年の名は矢吹丈。
天涯孤独の風来坊である。
この野獣の様に激しい気性のジョー。
ボクシングへの執念を持つ段平と
宿命的出会いからこの物語は始まる。

荒木作画

酒を落とし、ジョーを追いかける段平。
『しつこいな!ホントに!いい加減にしてくれよ!』
『いや、ワシはお前がうんと言うまで、どこまでもついて行くぞ!』
『へっ!残念ながら俺はうんとかハイとか言うのが大嫌いな性分でね!
わかったかい!おっつあん!』
『そうはいかねぇ!お前は俺と組んでボクシングをやることになっておるんだ!』
『だからさっきからヤダって言ってるだろう!
あんまりしつこくつきまとうと本当にはっ倒してしまうぜ!いいのかい!?』
『ほお、やってみるかい?ワシとの真剣勝負を!』
ファイティングポーズを構える段平!
『ほら!かかってこい!』
『へっ!後悔すんなよ!おっつあん!いくぜっ!』
飛びかかるジョー!
泪橋を背負い”舞々状態”になる段平。
・・・為すすべも無く倒れる。
『へっ!もうお寝んねかい!もとボクサーだって?へっ!売られた喧嘩だ、悪く思うな!』
去る、ジョー。
『間違いねぇ・・・俺の思った通りだ!お前の素質はタダもんじゃねえ!
・・・こんなにこたえる何てなぁ!ふははは・・・すばらしい!すばらしいパンチだ!』
立ち止まるジョー。
喋りながら近寄る段平。
『ふははは・・・やっと見つけた!お前はワシが長い間探していた男だ!
もう離さねぇ!絶対に離さねぇぞっ!俺から逃げられるもんなら逃げて見ろ!
わははは・・・地獄の底まで追いかけて貴様を連れて・・・うぅ・・・。』
ジョーの肩にしがみつくが、力つき、血反吐を吐き倒れる段平。

ジョーの顔へT.U
崩れ落ちた段平を見入るジョー。

こうして段平の執念が遂に捉えたかに見えた・・・。

サンドバッグを叩き練習をするジョー。
嬉しそうな段平。

段平はジョーと共に歩むあしたのために酒を断ち、
賢明に働きだした。

『待ってろよ、ジョー!
働いて今に立派なボクシングジムを建ててやるぞ!』
夜中まで工事現場で働く段平。

しかし、暴れん坊ジョーは段平の思う通りに行く奴では無かった。

パチンコを細工し景品稼ぎをするジョー。
(磁石で細工役はヒョロマツ)
その景品は路上で叩き売り。

そればかりか、ジョーのイタズラの数々は罪に問われた。
ジョーの将来を見つめる富豪令嬢”葉子”
そして、ジョーに賭けた段平の思いは遂に引き裂かれた!

雪の中、警察に連れて行かれるジョーを見つめ泣き叫ぶ段平。
『ジョー!ワシのジョー!』
両手拳を前に出し、パースを利かせたアオリ構図が素晴らしい!
『返せ~~~~~~~っ!』
ロングショットの段平。
膝から崩れ落ちる段平。
付いた膝から一瞬光の閃光が出て、
キラキラとした雪しぶきになる動画が綺麗(必見)。

ジョーの行き着いた先は、暗く冷たい・・・そして、厚い壁の中。
その中でジョーの思うことは、ただ一つ!

鑑別所の独房内で考え込むジョーのショットに。
『へへっ、かごの鳥か!くそう!このまんま黙っちゃいねぇぞ!
自由に羽を伸ばせる世界に飛び出すんだ!自由の世界に!』
※この止め画でジョーの今後の設定が決まった!

『ジョー、強くなるんだっ!この孤独に耐え、世界一のボクサーになるんだっ!』
雨の中弁当?を持ち傘をさして鑑別所外から見守る段平。

金山作画

『脱走だぁ!6号室の新入りが脱走するぞぉ!』
走る豚の群衆。叫びながら逃げまどう院生達。
※はじき飛ばされる院生。
画面左から無惨にはじき飛ばされボロボロになりほぼ裸の院生がINしてくる。
『助けてくれ!』
『どけどけどけ~!まごまごすると踏みつぶすぞ!オラぁ!』
豚に乗ったジョーが登場!

真俯瞰作画。
先頭の豚が院生数名をはじき飛ばす!
更に途中で木の塀&土管もはじき飛ばす!
『いやっほう!それ行け!ハハ!こんな所とはオサラバだ!
ウワッハハ!いいぞ!豚こう!もう少しだ!
もう少しで自由の天地へ飛び出せるんだ!』
・・・出口の門が見えてくる!

力石登場。
加えていた葉っぱを吹き捨て、
豚の大群をくぐり抜けジョーの乗る豚に近づいてくる。
(豚のモブシーン!)
『何だ!お前!どけどけ知らねえぞっ!』
突然、ジョーの乗る豚にパンチを入れる力石!
門までぶっ飛ぶジョー。
力石は向かってくる豚をパンチで行く手を静止!
次々に倒れていく豚達・・・。
※ジョーの前を走っていた豚の大群はどこへ行ってしまったのか?
力石はその大群の豚をすり抜けているので・・・気になりますね。

ぶちのめされたジョーを笑う院生達。
『豚こうを使って脱走する、これをホントのトンズラと言います!』
『笑ってやってくださいっ!』
一同大笑い!

『く、くっそう・・・!』
起きあがり力石を見上げるジョー。

『お遊びはおしまいだ!大人しく帰えんな。』
豚をけりながら誘導する力石。

『待ちやがれぃ!後一歩、後一歩でこんな所から抜け出せたのに!
この出しゃばり野郎が!』
ジョー、力石に声をかけながら立ち上がりファイティングポーズを取る。
力石、振り向く。
『余計なお節介しやがって!』
力石に近づくジョー。
『あ!バカ!よせよせ!』
力石の恐ろしさを知らないジョーに警告する院生!
※驚きのあまり右手を噛みついてしまい、あわてて抜き出すが、
指は真っ赤に腫れ上がる・・・。(細かい芝居)

『ふふっ。』
力石笑う。
『野郎っ!』
ジョーの右ストレートが力石の顔面を捉える!
(つけPAN作画&PANで力石の顔へ)

『すげえ!当たったぞ!・・・(これは面白くなってきた!)』
驚く院生達。

『ふふっ!なかなかやるじゃねぇか!坊や!』
鼻血をぬぐいながらの力石。
『へへっ!こちとら喧嘩の天才だい!』
思いっきり得意満面なジョー!
(ふんぞり返って得意顔)
さらに3発力石にパンチを繰り出すが、
直ぐさま力石の連打を浴びるジョー!
『どうした!坊や!もうダウンかよ!』
と本気になった力石。
『・・・殺してやる!ぶっ殺してやる!』
とジョー。

『いかん・・あの新入り、殺されてしまうぞ!
力石さんやめてください!死んじまうよ!』
と院生達。
(ガイコツらしきキャラが台詞)

フラフラと力石に近づくジョー。
『ぶっ殺してやる!』
とジョー。
力石とどめの一撃をジョーに!
※殴る直前もの凄い形相になる力石。
髪を逆立て、狂気の顔に!(コマ送り必見!)

この男、力石徹。
機械の様に鋭く正確なパンチを持つチャンピオン候補の若手ボクサー!
その力石のパンチはジョーを完膚無きまでにも打ちのめした。

崩れ落ちるジョー。
ポケットから出したハンカチで鼻血をぬぐう力石。

荒木作画

独房で倒れ寝ているジョー。
『くそう・・・力石徹か!面白れぇ!やってやろうじゃねえか!
あの段平おやじの言うボクシングってやつを!
おらぁ、ボクシングに食らいついてやるぜ!
・・・あの鼻曲がり野郎をぶちのめすまで!』
ベッドのフレームを力一杯握る手のアップ。
(巨人の星風のゴツい手の描写!)
力石との回想シーン。
『やったるぜ!ボクシングを!』

少年院の体育館で段平コーチのもと練習するジョー。
バーベルを持ち倒れたジョーに水がかけられる。
縄跳びをするジョー。
腹筋を鍛える為に重りを腹に落とされるジョー。

『くそお!力石っ!力石っ!』
段平相手にパンチを繰り出し、サンドバッグも叩くジョー。

段平の前でシャドーをするジョー。
『ジョー、お前にはガードもフットワークもねえ!
力石にはまだ勝てねぇ!だがいいか!肉の傷み、骨のきしみで覚えるんだ!
そして這い上がるんだ!四角いジャングルの上に!
お前なら出来る!きっと・・・きっと!』
段平にカメラT.U、更に回り込み、段平フレーム一杯のどアップに!
泣きながらの心の叫び!(左眉色パカ・・・)

杉野作画

炎の画面からジョーVS力石戦へ!

かくて、執念の鬼と化したジョーと力石の血で血を洗う闘いの日々が始まった!
それはジョーにとって新しい人生への挑戦でもあった!

ゴングが鳴り、ジョーに向かってくる力石。
ジョーは背中を向けたまま静かに力石を待つ!
『待っていたぜ!力石!今日という日を!段平おやじは俺が負けるという、
だがな、俺のボクシングは腕だけで打つんじゃねぇ!男の意地を根性で打つんだっ!』
向かってきた力石に向き直り、
『来いっ!力石っ!』

血まみれ泥まみれの今日を乗り越えてジョーは行く!
栄光の明日を目指して!
風に泣くジョー!
太陽に喚くジョー!
あしたに羽ばたく”あしたのジョー”
ジョーと力石が向き合いお互いパンチを繰り出したところで止め。
タイトルが再度入って・・完!

※赤文字はナレーションです。

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