『力石の・・・唄が聞こえる』

ストーリー

真夜中、白木ジムを突然訪れ、強引に入り込んだジョーは
かつて力石が減量と闘った地下室に閉じこもる。

葉子からジョーの所在を聞いた段平は、
ジョーを説得し連れ出そうとするが上手くいかない・・・。

段平はジョーに付き合い、３日間飲まず食わずに・・・。
お互い根比べが続き、段平はジョーの強い意志に遂に甲を脱ぐ決意をする。
段平はジョーを呼び出し、減量の協力を約束する。
ドアが開き、ようやく出てきたジョーは”乾きの極限状態”でカサカサの顔に・・・。

丹下ジムに戻ってきたジョーはハードな練習に耐え、トレーニングに励む。
しかし、思うように体重が減らない・・・。

段平は西に秤屋へ行き、ジムの重りの細工を依頼する・・・。

マニアック視点

●夜中に白木ジムの訪れるジョー。
背景のみのカット進行。
「どなたですか？こんな真夜中に！」
「いいから開けなよ。俺はここのジムの関係者なんだ。」
「あっ。」
「悪いがな…、地下室の鍵貸してくれ。」
「あっ、あの部屋は立ち入り禁止になってるんですが・・・。
あの、矢吹さん！待ってください！ちょ、ちょっとお待ちください！
あ、あのちょっと！矢吹さん！」
●西、段平に減量苦の思い出話
夜中にこっそりうどんを食べている所をジョーに見つかる・・・。
「だいぶ前の事やけど。
わいが減量中にその苦しさに耐えかねて、毎晩コッソリとうどんを食うとった時のことや…。
それがジョーに見つかって、殴られた。１発、２発・・・。」
「でも、今でもワイ、あん時のジョーの顔が忘れられへん。
うどん食べたんが、まるでジョー自身のような、苦しそうな、
悲しそうな目をしておりましてん。こたえましたわぁ…。」
「殴られた痛さよりも何よりも、
そん時のそのジョーの気持ちがわいの胸にズ～ンとこたえましたんや。
そん時からですねん・・・、わいが本気でボクシングに打ち込もう！ちゅう気になったんわ…。
皮肉なもんでんなぁ、今度はそんなジョーが減量と戦わんならんとは。」
●葉子車で段平と西を迎えに来る。（自ら運転）
ジョーが地下室に閉じこもった事を伝える・・・。
●段平、ジョーが閉じこもる地下室のドアを激しく蹴り、うずくまる・・・。
「・・・冗談じゃねぇ！こんなこって、わしのジョーに力石君の二の舞は絶対させんぞ！
そんなこたぁ、何があってもさせはしねぇ！西、ハンマー持ってこい！」
ハンマーで壊そうとするがビクともしない地下室のドア・・・。
●ドアを開けるジョー。
「やめてくんねぇか、おっつあん。
おれは今、自分自身のウェイトと戦うだけで精一杯なんだ。
頼むよ、おっちゃん。おれに構わねぇでくれ。
そっとしておいてくれよ。」
しかし、聞く耳を持たない段平はジョーを連れて帰ろうと必死。
殴り合いにまでなる・・・。
結局、段平はジョーに殴り倒され、またドアは閉められる。
※段平に始め殴られるジョー。
立ち上がりファイティングポーズを取ったジョーのセル画は
右眉の色塗り忘れ。（そのまま肌色に・・・）
「ぶっ殺す！今度邪魔しやがったら必ずぶっ殺すぜ！」
言い終わりそのまま倒れるジョー。
※現時点で、丸６日絶食のジョー。
●段平は西や葉子達に退却を依頼。
※残像を残したスロー画像で退却する西＆白木陣営
出崎監督の印象的な画面効果処理演出です。
「さぁ、ジョー！おめえの地獄、わしがしっかり見届けてやるぞ！」
●夕暮れ時、葉子は幹之助を飲みに誘う。
リムジン後部座席に座る二人。
※アオリで二人を見上げたアングルは最高。
●バーでブランデーを飲みながら
力石の事を思い出しながら話す二人。
力石の減量時回想シーン
「うぉぉぉ～！開けろ～っ！あ、開けてくれぇ～！」
「み、水、水はどこだぁ～、水だぁ！やめだぁ！
もう減量はやめだっ！水だっ！どこだ～、水～っ！！水～！」
「ああぁっ！誰だ…、誰がこんな事を！」
「私がやったことです…。ごめんなさい。」
「こうなるだろうという事は解っていたの。
でも、乾ききった身体にいきなり冷たい水はいけないと、
先生に注意をされていたので…、ジム中の蛇口に針金を巻かせたのです。」
「でも、ここに白湯があります。これをお飲みなさい。」
「力石くん、私はあなたが乾きに耐えかねて、
減量を諦めたということを悲しんだりはしません。
それより貴方が少しでも・・・、
ほんの少しでも人間らしい弱さを持っていてくれたという事が、とても嬉しいの。
さぁ、お飲みなさい。
一息にこれを飲み干して、元のはつらつとした力石くんに戻るのよ・・・！」
「・・・ありがとう、お嬢さん。そのお気持ちだけありがたく飲ませていただきます。」
「・・・もう少しで負けるところでした。でも、もう大丈夫。
キザな言い方ですが、お嬢さんのその涙を見て決意が更に固まりました。
この痩せさらばえたカサカサの身体で、立派に打ち合ってみせますよ…、あの、矢吹丈と！」
「・・・ありがとう、本当に・・・、お嬢さん。」
「今夜はぐっすり眠れそうです・・・。お休みなさい・・・。」
●突然、地下室で暴れ出すジョー。
段平の視線に気づき、シャドーをし始めるジョー。
出窓を鉄材でふさぐジョー。
叫ぶ段平・・・。
●松木が来て段平に食事を勧めるが断る。
松木は白木ジムの人間一人連れてくる。
「どうも、お手数かけしまて…。」
段平は背を向けたまま謝る・・・。
●西、紀子に白木ジムの状況を話す。
段平もジョーに付き合って丸３日絶食。
ジョーは現時点で９日間絶食。
●情報を聞いたキノコは仲間に伝達。
メンコもベーゴマも相撲も漫才ゴッコも身が入らず、
暗いムードの子供達。
泣き出すキノコにつられて泣き出すサチ。
●金陣営のスパイ２人が玄マネージャーにジョーの減量を伝える。
話を聞いた金はパンチングボールを叩きながらニヤリ・・・。
●段平、ジョーのシャドー音でジョーの生死を確認。
葉子達にも説明する・・・。
●「おいジョー！聞いてくれぇ！わしが悪かった！
お前がバンタムに留まるって決意が、どれほど強いものかよ～くわかった！
もう金輪際邪魔しねぇ！だから出てきてくれ、これからは邪魔するどころか、
わしもおめえの減量に協力しようじゃねえか！」
遂に甲を脱いだ段平はジョーに協力。
カサカサにひからびた顔で現れるジョー。
「へへ、さぁ、か、帰ろうぜ。俺たちの・・・、泪橋へよ・・・。」
●泪橋に戻り、ロードワーク中のジョー。
ミカン男、ジョーの顔にビックリし、歯磨き粉を出しまくってしまう・・・。
●子供達もロードワーク中のジョーの顔にビックリ。
後を追う子供達。
サチは持っていた下駄を投げ捨て追いかける・・・。
●林屋の前で集まる子供達、紀子。
西、段平から聞いた説明を皆に話す。
「乾きの、極限状態ですねん・・・。」
「おっちゃんの話によると、体内の水分が極度に不足すると唇が乾いて腫れ上がり、
舌の中までカサカサのスポンジみたいに膨れて、しゃべることさえ出来んようになるそうです。」
●報道関係者等、一さい立ち入りを禁ず　丹下段平
張り紙を丹下ジム入り口に張り、ジム内ではストーブをたき、猛特訓！
「試合まであと一週間だ、気ぃ抜くなぁ！」・・・と段平。
●ジョーは段平がピンセットで水を染み込ませた綿をしゃぶる。
これが食事代わり・・・。
「いいか？口ん中湿らすだけだ。慌てて綿まで飲み込むんじゃねぇぞ？
・・・うめぇか？そうか・・・フフ・・・。」
・・・涙を浮かべながら話す段平。
●夜、林屋に西を訪れる段平。
段平は西に５kgの重りを渡し、細工を依頼する・・・。

ハーモニーショット

★西、段平に減量苦の思い出話
夜中にこっそりうどんを食べている所をジョーに見つかり２発殴られ、
鼻（左鼻）からうどん！西アップジョー背後でファイティングポーズ
PAN.UPハーモニー（１）
★PAN.UP後、ジョーの悲しい顔のアップ　ハーモニー（２）
※セル画（トレス線）ずれる
★去る、ジョー。泣き崩れる西。PAN.UPハーモニー（３）
※うどん屋台からジョーを見つめる親父。
★力石の減量時回想シーン
「うぉぉぉ～！開けろ～っ！あ、開けてくれぇ～！」
叫ぶ力石のアップ　T.Bハーモニー（４）
★「み、水、水はどこだぁ～、水だぁ！やめだぁ！
もう減量はやめだっ！水だっ！どこだ～、水～っ！！水～！」
棒でドアをぶち破り彷徨う力石　T.Uハーモニー（５）
★「・・・ありがとう、お嬢さん。そのお気持ちだけありがたく飲ませていただきます。」
白湯をこぼす力石　驚く葉子　T.Bハーモニー（６）
★白湯をこぼし、更に決意が固まり力石去る・・・。
「力石くん！」
葉子泣きながら力石の背中を見つめ叫ぶ！　T.Bハーモニー（７）
★地下室で膝を抱えたジョー。
「あぁ、水、あぁ。」・・・悲壮な顔アップ　ハーモニー（８）
★突然、地下室で暴れ出すジョー。
段平の視線に気づき、シャドーをし始めるジョー。
ジョーの手前にはファイティングポーズの力石。
力石のみハーモニー（９）
★力石顔ドアップ　ハーモニー（１０）
★段平が西に秤の細工を依頼中、ジョーは猛特訓中。
シャドーをするジョー。
右回りに少し回転しつつT.Bハーモニー（１１）

以下２枚はセルでハーモニー的処理（もちろんカウントせず）
★地下室内体育座りのジョー　T.Bハーモニータッチ
※塗りはセル（１）
★段平、ジョーに減量の協力をドア向こうで約束。
中から聞いているジョー　ハーモニータッチ
※塗りはセル（２）

11枚　（合計139枚）

注目ポイント

★葉子はバーで幹之助とブランデーを飲みながら
力石の事を思い出す・・・。
BGMは羽田健太郎氏作曲の”横溝正史MMの世界金田一耕助の冒険【特別編】”に収録
KING RECORDS KICA3034　2000.1.7発売 定価2,800円

★夜、林屋に西を訪れる段平。
段平は西に５kgの重りを渡し、細工を依頼する・・・。
「駅前になぁ、秤屋があるの知ってるか。」
「へ、へぃ。」
「そこへ、ちょいと行ってほしいんだ。」
「秤屋へ？　何をしにでっか？」
「これを見ろ。こいつはなぁ、ジムにある秤５キロのおもりだ。
これを秤屋に持って行ってな・・・。
大きさも形もそっくりで、ちょいと重さを細工したやつを大至急作ってもらってほしい。」
「何やて？そんな…、ジョーをペテンにかけるような。」
「馬鹿たれ！奴を生かしておく為だったら、わしはペテンでもイカサマでも何でもやるっ！」
※原作では同様に秤細工をしますが、アニメの様に細かい描写は無し。
計量時での結果のみ。

所持セル画リンク→

スタッフ＆キャスト

脚本：高屋敷英夫

絵コンテ：さきまくら

ディレクター：竹内啓雄・大賀俊二

原画：中村隆太郎・杉野佐秩子・福島敦子・塚田信子
　　　大塚伸治・森本晃司
動画：加藤涼子・高奥誠也・小沢尚子

仕上げ：スタジオロビン　大野八重子・三木貴子・世良深雪
　　　　下篠潤子

背景：小林プロダクション　工藤美由紀・小倉宏昌・柴田千佳子
　　　田辺智・石井睦夫

制作進行：斉藤昭一郎


声の出演：寺島幹夫（玄曹達）、水鳥鉄夫（ドヤの人）、
　　　　　鈴置洋孝（松木）、屋良有作（玄曹達の部下Ａ）