劇場版『あしたのジョー2』
1981年7月4日公開
製作総指揮 梶原一騎
監修 ちばてつや
脚本・監督 出﨑統
作画監督 杉野昭夫
音楽監督 荒木一郎
主題歌『明日への叫び』ジョー山中
出演
矢吹 丈・・・あおい輝彦
丹下 段平・・・藤岡重慶
力石 徹・・・細川俊之
白木 葉子・・・檀ふみ
マンモス西・・・岸部シロー
カーロス リべラ・・・ジョー山中
ホセ メンドーサ・・・岡田真澄
同年4月19日より特典満載パスポート型前売り券が発売。
限定2000名につき徹夜組250人を含み5000人が渋谷パンテオンに並んだ。
(筆者は1172番で見事限定パスポートをGET)
特典の一環で、あしたのジョーフェスティバルが4月26日に渋谷パンテオンで開催。
声優の麻上洋子さんの司会で進行。おぼたけし氏の歌唱、原作者の高森朝雄氏(梶原一騎)、
ちばてつや氏、ジョー役のあおい輝彦氏らが登壇。質疑応答、そしてジョー2のダイジェストが上映された。
映画映像アスペクト比は16:9。TV版4:3の上下を切った映像。
当時通常4:3のL/O(レイアウト)で新作も全て作画されている。
カットによってはかなり頭が切れて見える場面も見受けられる。
制作はTV版放送時に行われ、TV版終了(1981年8月31日)前に公開され、先に燃え尽きる場面を公開。
TV版同時進行という考えられない制作体制だった・・・。
本編112分、総カット数2324(新作※1125)
※新作カットは最終的109カット削られ1016カット
●ROUND1
映画は対力石戦の回想シーンよりスタート。
TV版のゴロマキ権藤とウルフの下りはカット。
力石アッパーカットでジョーは上段左上にSL(スライド)
ジョーアップカットは逆に下段右下へSL。
この際にセルバレ(絵が足りてない)で左髪部分が切れる。
ジョーダウン。仁王立ちの力石(Aセル)
アッパーでダウンするBセルのジョーは90枚のBセル動画でEND
TV版も含めハーモニー画1号となる握手のすれ違いカット
力石の死因説明の医師音声は玄大佐(劇場版では無)CVの寺島幹夫
テンカウントゴングアナウンスはウルフ金串や松木CVの納谷六郎
●ROUND2
ジョーが1年ぶりに帰ってくる。ジョー自ら”1年ぶり”の台詞。
本作は前作1980年の劇場公開から1年。
TVではその半年後に放送が開始されたの”半年ぶり”の台詞となっている。
ジョーは力石の墓参りで葉子と出会う。
TV版では墓参りをするジョーに葉子は『ありがとう、力石君の代わりにお礼を言うわ』に対し、
ジョーは『よしなよ、おっ死んじまってもまだ自分のものだと思っているのかい』に対し劇場版は、
葉子『・・・帰って来たのね』ジョー『多分な・・・』葉子『どこへ?1年もの間』ジョー『覚えてねぇ・・・忘れたよ』
と台詞が大きく異なる。
●ROUND3
ジョーの復帰戦、殿谷浩介そして、アップル加藤のKOシーンと続き5戦5勝。
西は顔面にパンチがヒットしてない事に気づき・・・。
ジョーはタイガー尾崎線に敗退(TKO) 川辺で力石を想い・・・。
絵コンテ(TV版5話 C216)で力石をスターウォーズな去り方の指示。
ここまで映画開始からTV編集15分で見せる出﨑監督の手腕の凄さ。
●ROUND4
南米でロバートと商談する葉子。バルコニー回り込み
絵コンテ(TV版5話 C228)で驚愕の回り込み作画の指示。
劇場はジョーVS原島戦はカット。
カーロスのタイガー、原島、南郷戦もカットされる。
TV版で劇的だったカーロスの予告KOもカット。
ジョー、カーロスとのスパーリングが重視される。
カーロスがスパーリングで現れた際に他の選手を止めるコーチCVに渡部猛氏。
本来ゴロマキ権藤役だが、ホセ戦のみ出演につき他のキャラ(大橋運動部長も)も兼ねる。
カーロスとのスパーリングで強烈なダウンを喫するジョー。
”トンズラ”場面をリメイク。絵コンテでは”トン走”と明記。
力石のすり抜けはオリジナルの金山明博氏の作画と同じ”サンドイッチ”描写。
カーロスとのスパーリングが終わり安堵の段平&ジョー。
この場面は出崎監督のお気に入り直接お聞きした。
TVは安堵した葉子アップカットがあったが、劇場版ではカットさてロング後ろ姿のみ。
サンタの姿でドヤ街に現れてプレゼントを配るカーロス。
TV版10話にあたる場面。放送時期に合わせクリスマス仕様。
原作では車を売りプレゼントを購入しドヤ住民に配り交流を図った。
●ROUND5
対カーロス戦は試合途中からの描写。劇場版エースをねらえ!並みのスピーディな展開だが、
ここまで新作ではなく既存TV版の編集によるものなのでやはりエースとは違った印象。
TV版オリジナルだった”スーパーパンチ”の説明もなし。ハーモニーの動画もTV版の引用。
試合からひと月が経ち、電車で目撃されるジョー。会話モブの声に肝付兼太氏。
肝付氏の”あのリベラか!”は台本と違うセリフ。肝付氏は太郎CVも。
白木ジムにファイトマネー残り半分を取りに来るジョー。
原作、TV版とも高額を支払い、ジョーに一喝されるが、劇場版はそのくだりをカット。
テレックス報告でカーロスのKO負け(1R 1分33秒)を松木(CV納谷六朗氏)が葉子に報告。
更にロバートマネージャー談話が入り、ハーモニーの振り向き動画を引用。
『グッバイ、マイ、カーロス・リベラ』
●ROUND6
紀子とのデート。TV14話の作画を引用。
CVは森脇恵さんから藤田淑子さんに変更。年齢がぐっと上がった印象。
劇場ではジョーの好きなトマトサンドを食べる場面はカット。
●ROUND7
金竜飛戦。舞々シーンよりスタート。
CVは古川登志夫氏。丹下ジム練習生の神田も兼ねる。
映像は舞々場面から額に血を流すジョーを見て殺してしまった父親を思い出し叫ぶ金、
そして、リング外に叩き出されてOKされる所まで。出﨑監督は本来、
ジョーの減量場面から金戦までもっと深く描きたかったと述べている。
映画は出来れば3部作にしたかったともお聞きした。
●ROUND8
HOTEL ROYALでにて矢吹丈 連戦連勝祝賀会。
主催 関東テレビ 後援 朝刊スポーツ
大橋運動部長CVは渡部猛氏。
ホセ・メンドーサが現れてジョーの両肩にアザを残していく・・・。
この祝賀会はTV版では金竜飛戦前に行われた。
●ROUND9
ハワイ、ホノルル到着後、真っ先にホセがいる”コナハジム”へ。
ジムに貼られたホセのポスターにはカーロスが一緒に掲載。
ポスターの画はハーモニーで処理されて、多数の画が描かれている。
●ROUND10
マウイ乗馬クラブ。メンドーサ婦人のCVは紀子と同じ藤田淑子さん。
乗馬場面はアニメオリジナル。TV版で制作されたものを映画でも使用。
しかし、TV版でフリーのルポライターでジョーをデビュー時から追いかけている須賀清は映画版では登場せず。
マウイ乗馬クラブにジョーを連れて来たのは須賀なので、画面で2カットほどカメオ出演。
●ROUND11
ハワイで葉子とドライブをするジョー。
もちろんアニメオリジナル。暴走するバギー。作画は大橋学氏。
『この足跡・・・』
浜辺で葉子と歩くシーンは劇場のみ存在する場面。
原作でも重要とされる葉子がジョーをパンチドランカーと予感する場面。
TV版では劇場後の放送となるが、この場面は使用せず。
逆にTVエンディングで似た場面を使用し印象ずけた。
●ROUND12
ホセ・メンドーサVSサム・イアウケア
ハワイの英雄、フェザー級チャンピオンとのノンタイトル戦。
TV版でのVサインの2発予告、そして肩を掴んで好きに打たせる描写はなく、
金竜飛戦に近いほぼKOシーンのみ見せる展開。
モブ声優の”イアウケア、何止まってんだよ!”の叫ぶ声が印象に残る。
原作では1R、1分52秒KO TVでは1R 1分23秒KO、劇場ではタイム告知無し。
その後、ジョーとホセは再会を約束し『SEE YOU AGAIN』
アニメオリジナル。
●ROUND13
劇場での新作絵コンテにはジョーが世界タイトル挑戦前に、
もう一試合東洋太平洋タイトル防衛戦を行ってもらうための葉子の会見が描かれていたが、
劇場本編ではではカットされて、後にTV版で引用された。
そしてハリマオ戦。
ホセ戦へスピーディな繋ぎ、カーロス再登場に重点を置いた流れに。
劇場新作で先行描写され、後のTV放送版で肉付けされた。
※TV版でのヤクザ乱闘スパーリングの流れもあり、後のTV版ではゴロマキ権藤も客席に顔を出している。
ハリマオの大好きなチョコレートのくだりもTV版で追加補足されている。
カーロスがリングに現れた際に驚く葉子背後のモブにジョーのコスプレの遊びが。
控室でのカーロスが印象的。ボタンがとめられないカーロス。
ジョーが変わりにやるがやはりボタン一つもとめられず。
※原作では2つまではとめている。
●ROUND14
ホセ戦が正式に決まる。会場は日本武道館。
葉子はランドルフ・キニスキーから『ヤブキは間違いなくパンチ・ドランカーです。しかもかなり重症』と告げられる。
後の放送のTV版では同じカットで違うセリフになっている。
”十分ありうること””引き続きハワイに戻り資料の分析を進める”と変更される。
葉子から電話対応の練習生(神田)は金竜飛CVの古川登志夫氏。
西のアパートに出向き紀子との結婚についての話題をするジョー。
二人の結婚式は劇場版では作られなかったので、ラストに見せる紀子の表情は後に見せる紀子の表情を彷彿。
結婚式で見せる紀子の最後の表情は原作でも秀逸。原稿に目の部分にホワイトがあるのでちばてつや先生に質問したところ、
実は涙を描いたのだけど、ここで泣くのは・・・と思いホワイト修正した事をお聞きした。
※漫画再生叢書あしたのジョー付属誌にてインタビュー
雨の中でジョーを待つ葉子。サチはカイロを渡すが、時期は夏。
TV版では放送日に合わせた8月17日を世界戦の日時として告知されている。劇場公開は7月4日。
●ROUND15
そして・・・日本武道館は人並みに埋った・・・。
控室に来る白木葉子。控室場面原画は大橋学氏。
大橋氏は会場に向かうモブにご自身の似顔絵(振り返るモブ)を入れて印象付けた。
メキシコ国歌、日本国家流れる。
TV版ではホセがMAMBO NO.6、ジョーがFINGER DANCIN’共に高中正義氏の楽曲を引用。
紹介を受けて手をあげるジョー。劇場ではグラブあり。TV版ではグラブ無し。
TV版ではこの後、グラブをつけるシーンを追加したために描き直している。
劇場版でグラブメーカーはWINNINGに統一されているが、TV版で描き足しはREYES表記されているので、
追加シーンが簡単に確認出来る。しかし、この事は出﨑監督は知らなかったとお聞きした。
ダウンを喫したジョーに、無駄だ!立つんじゃねぇ!殺されちまうぞ!と段平。
やはり段平は立つんだ~!ではなく、立つんじゃねぇ!の人。
両肩を掴んで好きに打たせる場面は劇場(サム戦共々)では無し。TV版で後に補足。
インターバル『真っ白になるまで何も言わねぇでやらせてくれや』ジョーの台詞後に紀子との回想3カット予定が最終的に切られる。
飛び出した葉子がハイヤー内で髪をかき上げるシーンは絵コンテに無く、作画演出で追加されたカット。
杉野氏は出崎監督との対談で、葉子の固い髪のイメージを無くすため、少し長めにし、柔らかい感じ、
動きのある髪にするのに苦労したと発言。出崎監督はハイヤーの中で長い髪を耳の所ふとかきあげるシーン、
あの時の柔らかい髪の動きは絶品よ!と答えている。
少年院仲間のガイコツ髪型はTV版追加作画でフサフサに変化。
葉子が『もう少しじゃないの矢吹君、頑張るのよ!』台詞時にモブのがんばって~!の女性声が被る。
葉子、サチ、紀子(メンドーサ婦人)の声でもないので音声スタッフでしょうか?
ホセ半狂乱になり反則を・・・!
ジョーの目の中の揺らぎエフェクトは大橋学氏がUFOをイメージして描かれたもの。
ホセん半狂乱シーンは全て大橋学氏が作画担当。
反則後のホセアップの太い眉毛は仕上げで間違えて太く塗ってしまった事によるもの。
判定後にジョー達に歩み寄る段平、西、そして練習生達。
最後に声をかけたのは段平だが、TV版では西が最後に名前を呼んでいる。
ハッとなり、グラブを落とす葉子。TV版追加で紀子アップ、子供達、カーロスとキニスキー、
少年院仲間達、ウルフ、そして帽子を取るゴロマキも追加作画されている。
旅に出たイメージ画像をインサートし、4枚の燃え尽きシーンをアップからロングへ切り替えて完。
TV版はロングからアップで見せて完。